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東京地方裁判所 平成11年(ワ)10976号 判決

原告 パレスマンション管理組合

右代表者理事長 本間三樹夫

右訴訟代理人弁護士 宮岡孝之

右訴訟復代理人弁護士 外山奈央子

被告 李春子承継人有限会社柳栄商事

右代表者代表取締役 柳明吉

主文

一  被告は、原告に対し、金五六七万九六八〇円及び内金四九九万四八八〇円に対する平成一二年九月一九日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

二  被告は、原告に対し、平成一二年一〇月五日から毎月五日限り一か月当たり金一一万三五二〇円の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

主文同旨

第二事案の概要

一  判断の前提となる事実(かっこ書に認定に用いた証拠を掲記し、又は弁論の全趣旨と記載した事実以外は、当事者間に争いがない。)

1  当事者及び関係者

(一) 原告は、渋谷区本町六丁目六番一号所在のパレスマンション(以下「本件マンション」という。)の区分所有者によって構成される管理組合である。

(二) 被告被承継人李春子(以下「李」という。)は、平成九年二月一日以降本件マンション一階の専有部分(以下「本件専有部分」という。)を所有していた。

(三) 李は、被告に対し、平成一一年一一月一日、本件専有部分を売却し、同月二四日、その所有権移転登記手続を了した(乙一、弁論の全趣旨)。

2  原告の管理規約における管理費等の取扱い

原告の管理規約(以下「本件規約」という。)二四条は、本件マンションの区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費及び特別修繕費(以下、併せて「管理費等」という。)を原告に納入しなければならないとし、その額は、各区分所有者の専有部分の床面積の割合に応じて算出すると定めている。

原告は、本件マンションの各区分所有者に対し、本件規約二四条に基づき、平成九年二月から、各専有部分の床面積に応じて管理費等を請求している(甲二、四、弁論の全趣旨)。

3  李及び被告が支払うべき管理費等並びに原告の同人らに対する請求

(一) 本件規約においては、平成九年二月分以降の本件専有部分の管理費等は、一か月当たり管理費が五万三〇八〇円、特別修繕費が六万四四〇円の合計一一万三五二〇円とされている(甲二、四、弁論の全趣旨)。

(二) 原告は、李に対し、平成九年二月分以降の管理費等の支払を請求したが、李は、その専有部分である本件マンション一階の建物部分が二階から上の建物部分とは別の建物であるから、原告の組合員ではないと主張して、その支払をしない(甲四、弁論の全趣旨)。

4  管理費等に対する遅延損害金の定め

本件規約六二条二項は、組合員が管理費等の支払を遅滞したときは、原告は、右組合員に対し、遅滞金額に対する年一四パーセントの割合による遅延損害金を付加して請求すると定めている(甲二、弁論の全趣旨)。

二  争点

1  争点1 本件専有部分についての管理費等の支払義務の有無

2  争点2 本件専有部分についての管理費等の算出基準の効力

三  争点に関する当事者の主張

1  争点1について

(一) 被告

(1)  本件マンションは、一階の本件専有部分は店舗等として、他の区分所有者が所有する二階から六階までの部分は住居として分譲されたものであるところ、一階部分用の出入口と二階以上の部分用の出入口は別であり、李及び被告は一階部分用の出入口のみを使用し、他の区分所有者は二階以上の部分用の出入口及び階段を使用する構造になっているから、二階以上の部分の出入口及び階段部分は、建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)三条ただし書にいう一部共用部分に当たり、その管理費を李及び被告が負担する理由はない。

(2)  また、水道及び電気についても、一階部分と二階以上の部分には独立した別個の設備が敷設され、二階以上の部分の区分所有者が使用する屋上設置の水タンクの管理に要する費用等を李及び被告が負担する理由もない。

(3)  右のとおり、本件マンションは、一階部分の独立性が極めて強く、李及び被告は一階部分を自ら管理し、他者の管理を必要としていないから、李及び被告が管理費等を支払う義務はない。

(二) 原告

(1) ア 本件マンションは区分所有建物であり、本件専有部分の独立性が強いからといって、その区分所有者たる李及び被告が共用部分についての管理費を負担しないことにはならない。

イ また、本件マンションの一階から二階以上に至る入口部分には、一階部分の一部を占有する有限会社フジワラ等に至るドアが設置されており、一階部分の所有者及び賃借人も、右入口部分を利用することができる構造となっている上、一階部分の一部を占有する富士理容店の出入口部分は、共用部分にある。

したがって、右共用部分に係る管理費等が生ずる以上、区分所有者たる李及び被告は、右管理費等の支払義務を負う。

(2)  また、管理費をもって充てる経費は、次のとおりであり(本件規約二六条)、本件マンションの出入口等の利用や水タンクの管理などに関するものに限定されないから、李及び被告がそれらを利用しないとしても、それが管理費等を負担しない理由とはならない。

ア 管理人人件費

イ 公租公課

ウ 共用設備の保守維持費及び運転費

エ 備品費、通信費その他の事務費

オ 共用部分等に係わる火災保険料その他の損害保険料

カ 経常的な補修費

キ 清掃費、消毒費及びごみ処理費

ク 管理委託費

ケ 管理組合の運営に要する費用

コ その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用

(3)  さらに、原告が株式会社エードとの間で締結した管理委託契約においては、同社は、本件マンションの屋外の建物廻り部分についてもゴミ処理を行うこととされている(右契約の管理委託基本契約書別表第二)ところ、右屋外の建物廻りは、一階部分(本件専有部分)が接する部分であり、その区分所有者である李及び被告は、右管理委託契約により独自にサービスの提供を受けている。

2  争点2について

(一) 原告

管理費等は、各区分所有者がその所有する各専有部分の面積の割合に応じて負担するとするのが最も合理的であり、この方法によって管理費等の負担割合を決めることが公序良俗違反となることはない。

(二) 被告

仮に、李及び被告に管理費等の支払義務があるとしても、本件マンションの構造は、一階部分の独立性が極めて強く、李及び被告は一階部分を自ら管理しており、他者の管理を必要としないから、このような特殊事情を考慮して、他の区分所有者とは異なり相当の減額をするのが合理的であり、右事情を一切考慮せずに管理費等の負担割合を専有部分の面積の割合に応じて算出するとする本件規約二四条は、著しく不合理であり、公序良俗に違反するものとして無効である。

四  原告の請求のまとめ

1  被告は、平成一一年一一月一日に本件専有部分を取得し、李の特定承継人として、平成九年二月分から平成一一年一一月一日までの李の未払管理費等合計三七四万九九四四円及びこれに対する遅延損害金の支払義務を承継し、また、本件専有部分の区分所有者として、その区分所有権を取得した日の翌日である平成一一年一一月二日から一か月当たり一一万三五二〇円の管理費等(支払期限を途過したものについては遅延損害金を含む。)の支払義務がある。

2  よって、原告は、被告に対し、法一九条、本件規約二四条及び法八条に基づき、

(一) 李から承継した平成九年二月分から平成一一年七月分までの未払管理費等小計三四〇万五六〇〇円及びこれに対する各支払期日の後の日であり、李に対する訴状送達の日の翌日である平成一一年七月二〇日から平成一二年九月一八日まで本件規約六二条二項に定める年一四パーセントの割合による遅延損害金の一部五五万六二〇〇円の合計三九六万一八〇〇円

(二) 李から承継した平成一一年八月分から同年一一月一日分までの未払管理費等小計三四万四三四四円及び区分所有者として負うべき平成一一年一一月二日分から平成一二年九月分までの未払管理費等小計一二四万四九三六円の合計一五八万九二八〇円及びこれに対する各支払期日の翌日から平成一二年九月一八日まで本件規約六二条二項に定める年一四パーセントの割合による遅延損害金の一部一二万八六〇〇円の合計一七一万七八八〇円((一)及び(二)の合計五六七万九六八〇円)

(三) (一)の未払管理費等小計三四〇万五六〇〇円及び(二)の未払管理費等小計一五八万九二八〇円の合計四九九万四八八〇円に対する平成一二年九月一九日から支払済みまで本件規約六二条二項に定める年一四パーセントの割合による遅延損害金

(四) 平成一二年一〇月五日以降毎月五日限り一か月一一万三五二〇円の割合による管理費等

の支払を求める。

なお、被告は、管理費等の支払拒絶の意思が明らかであり、被告に対し、将来請求をする必要がある。

第三争点に対する判断

一  争点1について

1  本件マンションは区分所有建物であり、その一階部分である本件専有部分も、法二条三項にいう専有部分に当たるから、法一九条及び本件規約二四条により、本件専有部分の所有者は、共用部分の負担に任じ、その割合は、本件専有部分の床面積の割合に応じて算出されると解される。

2  これに対し、被告は、本件専有部分の独立性が強く、その出入口も二階以上の部分用の出入口とは別にあり、二階以上の部分用の出入口及び階段は一部共用部分に当たること、水道及び電気についても、一階部分には二階以上の部分と別個の設備が敷設されていることから、李及び被告が本件専有部分の管理費等を負担する理由はないと主張する。

3  検討するに、本件規約においては、本件マンションの管理費は、共用設備の保守維持費及び運転費並びに共用部分等に係わる火災保険料その他の損害保険料のほか、管理人人件費、公租公課、備品費、通信費その他の事務費、経常的な補修費、清掃費・消毒費及びごみ処理費、管理委託費、管理組合の運営に要する費用等の経費に充てるものとされている(本件規約二六条)ことが認められる(甲二、弁論の全趣旨)ところ、たしかに、区分所有者建物にあっては、各区分所有者の利益状況は、異なっているのが通常ではあるが、共用部分の管理のため、また、マンション建物の維持のための必要費又は有益費たる内実を有する管理費の趣旨及び目的にかんがみ、一部の設備等を利用しない区分所有者がいるからといって、そのような区分所有者が管理費を負担しないと解することはできない。

また、本件マンションの出入口部分は、一階部分の出入りにも利用され得ることが認められ(甲五、七、弁論の全趣旨)、それが二階以上の部分についての一部共用部分に当たるとは認められない。

4  特別修繕費も、マンション建物の維持のために必要又は有益な費用に充てるために拠出されるものであり、これについての判断は、右3と同様である。

5  したがって、被告の右主張を採用することはできない。

二  争点2について

1  被告は、一階部分の独立性が強いとの特殊事情を考慮し、その管理費等は相当の減額をすべきであり、これを専有部分の面積の割合に応じて算出すると定める本件規約二四条は、著しく不合理であると主張する。

たしかに、法は、共用部分についての各共有者の負担の割合を規約によりその共有持分と異なる方法で定めることを許容しており(法一九条)、前判示一3のとおり、各区分所有者の利益状況も異なっているのが通常である。

2  しかしながら、共用部分につき各区分所有者が受ける利益の程度、差異等を管理費等の額にすべて反映させることは困難であり、本件マンションにあっても、一階部分の共用部分についての利益状況が二階以上の部分のそれと異なることがうかがえないではないものの、本件規約二四条のように、各区分所有者の専有部分の床面積に応じて管理費の負担割合を定めることが直ちに合理的な限度を超える差別的規制であり、法の趣旨及び民法九〇条に違反する無効なものとなるとは解されず、他にそのように解すべきことを基礎づける事由を認めるに足りる証拠は見出されない。

3  したがって、被告の右主張を採用することはできない。

三  李及び被告が支払うべき管理費等について

1  以上の検討によれば、李は、原告に対し、平成九年二月分から平成一一年一一月一日分まで一か月当たり一一万三五二〇円の割合による管理費等合計三七四万九九四四円について、その間の本件専有部分の区分所有者として、法一九条及び本件規約二四条に基づき、右金員及びこれに対する本件規約六二条二項に定める遅延損害金を支払う義務を負い、李の特定承継人である被告も、法八条により、これを支払う義務がある。

2  被告は、本件専有部分の区分所有者として、法一九条及び本件規約二四条に基づき、その区分所有権を取得した日の翌日である平成一一年一一月二日から一か月当たり一一万三五二〇円の割合による管理費等を(支払期限を途過したものについては遅延損害金を付加して)支払う義務がある。

なお、本件口頭弁論終結後に支払時期の到来する管理費等については、被告において右支払時期の到来した際にこれを支払うことを期待し難いことが明らかである(弁論の全趣旨)から、原告が被告に対して右管理費等についてあらかじめ将来請求を行う必要が認められる。

第四結論

以上の次第で、原告の被告に対する法一九条、本件規約二四条及び法八条に基づく

一  李から承継した平成九年二月分から平成一一年七月分までの未払管理費等小計三四〇万五六〇〇円及びこれに対する各支払期日の後の日であり、李に対する訴状送達の日の翌日である平成一一年七月二〇日から平成一二年九月一八日まで本件規約六二条二項に定める年一四パーセントの割合による遅延損害金の一部五五万六二〇〇円の合計三九六万一八〇〇円

二  李から承継した平成一一年八月分から同年一一月一日分までの未払管理費等小計三四万四三四四円及び区分所有者として負うべき平成一一年一一月二日分から平成一二年九月分までの未払管理費等小計一二四万四九三六円の合計一五八万九二八〇円及びこれに対する各支払期日の翌日から平成一二年九月一八日まで本件規約六二条二項に定める年一四パーセントの割合による遅延損害金の一部一二万八六〇〇円の合計一七一万七八八〇円

(一及び二の合計五六七万九六八〇円)

三  一の未払管理費等小計三四〇万五六〇〇円及び二の未払管理費等小計一五八万九二八〇円の合計四九九万四八八〇円に対する平成一二年九月一九日から支払済みまで本件規約六二条二項に定める年一四パーセントの割合による遅延損害金

四  平成一二年一〇月五日以降毎月五日限り一か月一一万三五二〇円の割合による管理費等

の支払を求める請求は、理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。

(裁判官 内堀宏達)

物件目録

所在 東京都渋谷区本町六丁目六番地一七、六番地一八、六番地一九、六番地二七

家屋番号 本町六丁目六番一九の二五

種類 駐車場 倉庫 事務所

構造 鉄筋コンクリート造一階建

床面積 一階部分三〇六・八二平方メートル

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